庭って何?-全体像とそもそも論
【庭とは何?多様な庭に共通するものは何?】
ある時Yahoo知恵袋を見ていたら、知恵袋に「日本庭園と洋風庭園の共通点はありますか」という質問が寄せられていました。両者の違いについて書かれたものは多いのですが、共通点について語られることは少ないので、このような質問が出るのでしょう。しかし、どちらも庭だから共通点はあるはずです。具体的には何でしょう
まず、できるだけ多くの、できるだけ様々な庭を思い出してください。洋風庭園も和風庭園も現代庭園も、大きいのも小さいのも、植物があるのもないのも。いろいろな庭が有るはずです
その上で考えてみましょう。それらの多様な庭に共通するものは何だろうか、と

北川村モネの庭マルモッタン

龍安寺方丈庭園

大橋家住宅の庭

岡山後楽園

無鄰菴庭園

友琳の庭
【庭に共通すること:造景された屋外空間】
ここで庭の共通点として私が思いついたのは以下のようなことです。
*屋外であること
本来、屋内の空間は庭園ではありません。室内の空間も庭園とよぶことはありますが、それは拡大解釈です。
*人為的に手を入れ、管理していること
完全な自然は庭園ではありません。ただし、庭園を造る際に自然のものを一部取り入れたり、見た目上自然をまねることはあります。
*「美」の要素があること
【なぜ屋外、なぜ修景】
ここでもう一つ考えてみます。なぜ屋外なのか(なぜ建物を作らず、屋外のままにしておくのか)。なぜ造景するのか。
私が思いついたことはこんな感じです。
*なぜ屋外にしておくのか
集会や作業のため(広い場所が欲しい、建物内を汚さない、など)
自然や開放感など屋外の雰囲気が欲しいため
隣家や公道との間に緩衝地帯が欲しいため
通風や採光のため
変形の敷地や斜面などで建物にできなかったため
なんとなく結果的に敷地が余ったため
維持費などの問題で建物を撤去したため
etc.
*なぜ造景するのか(なぜ手を入れるのが)
施設の性格や場所の用途に合わせた雰囲気をセッティングするため
庭づくりや庭いじり(花を育てるなど)を楽しむため
デザインを通じて思想やメッセージをつたえるため
とりあえず「荒れている」「ほったらかしている」と思われないため
etc.
なぜ造景するのかについては「何のために造るのか」「課題解決としての庭園」も参照
【なぜ改めて「庭とは何か」を問うのか】
ここで改めて「庭とは何か」を考えてみたのは、庭園マニアたちの姿勢に賛成できない部分があるからです。マニアの感覚と一般人の感覚は当然違います。ここでマニアがやりがちなのが、一般人の感覚を無価値な誤りのように思い、教育しなければならないと思うことです。
庭園マニアの場合で言えば、景色を眺めることや植物を愛でることを低級なように思い、石の話や蓬莱鶴亀の話を誰彼構わず聞かせたがる、ということをしがちです。ですが本当に一般人の感覚は価値のない誤りなのでしょうか。「そもそも論」からすればむしろ一般人が正しいのではありませんか?
一般人は庭を使いますが、マニアは使うことに関心がありません。普通の庭好きは庭を通じた幸せに関心がありますが、マニアは庭自体に関心があります。
感心が庭にとどまり、その先に興味がないという点で、マニアは一般人よりむしろ後退しています。
【庭園の一般的なイメージ】
このページの最後に、庭園についての一般的な(マニアックではない)認識を辞書から探ってみます。「何かをする場所」「植物のある場所」「美しく整えられた場所」などのイメージが混在していることがわかります。
まず国語辞典で「庭」「園」「庭園」項目を見てみましょう。
*「庭」の辞書的な意味
1 敷地内の家屋などのない土地に、草木を植えたり泉水を設けたりした所。庭園。「―仕事」
2 玄関の中や台所などの土間。
3 物事を行う場所。「学びの―」
(旺文社国語辞典)
1 屋敷内で、ある広さをもって空けてある地面。草木を植えたり、泉水や築山を設けたりする。「―の手入れ」「―を造る」「―をいじる」
2 物事の行われる場所。神事・行事などの行われる場所。「学びの―」「いくさの―」「祭りの―」
3 家の中の土間。
4 波の平らな海面。
(goo辞書)
古くは何かを行うための平らな所を指して「庭」と言い、神事・狩猟・農事などを行う場所や、波の平らな海面などのことも言った。
「学びの庭」といった用法は、このような意味を持っていたことに由来する。
奈良時代には、草木が植えられたり池が造られたところは「園(その)」や「山斎・島(しま)」と呼ばれ、「庭(には)」と区別していたが、平安時代頃から「には」が庭園の意味に転じた。
(語源由来辞典)
*「園」の辞書的な意味
1 野菜や果樹を植える畑。「園芸/茶園・菜園・田園・農園・薬園」
2 一定の目的でこしらえた庭や区域。「園地・園庭/開園・学園・公園・造園・庭園・梅園・閉園・名園・楽園・霊園・動物園」
3 子供が学んだり遊んだりする施設。「園児・園長/卒園・保育園・幼稚園」
(goo辞書)
*「庭園」の辞書的な意味
・庭。特に、手をかけて造った庭。
(旺文社国語辞典)
計画的に草木・池などを配し、整えられた庭。「日本—」「屋上—」
(goo辞書)
大自然に擬して人間がつくった小自然の景観。原初は神を祀(まつ)る儀式の場であったり、農作業などの実用の場であったりしたが、文化が進むにつれて、人間と自然とのかかわりを求めて、住居を取り巻く環境として発達した(以下略)
(日本大百科全書より一部抜粋)
*「garden」の辞書的な意味
ついでに英語の「garden」についても見てみましょう。ここでも、「植物のある場所」「手入れされた場所」「何かをする場所」などのイメージが混在しています
1a: a plot of ground where herbs, fruits, flowers, or vegetables are cultivated
(ハーブ、果樹、花、野菜などを育てる土地)
1b: a rich well-cultivated region
(植物が多い[洗練された]華美な場所)
1c: a container (such as a window box) planted with usually a variety of small plants
(各種の小型の植物を植える箱、例えばウインドウボックス)
2a: a public recreation area or park usually ornamented with plants and trees
a botanical garden
(余暇活動のための公共のエリアで、通常草木で飾られている場所)
2b: an open-air eating or drinking place
(屋外の飲食スペース)
2c: a large hall for public entertainment
(興業のための大規模なホール)
(Merriam-Webster English Dictionaryより)
【補足:庭と庭園】
補足で、庭と庭園の関係について解説します。
庭園という言葉の使いかたには大きく分けて2つあります。
・ほぼ「庭」と同じ意味で「庭園」という言葉を使う場合。
・庭の中で計画的にモノを配置し、特に手を入れた部分を庭園と呼ぶ場合
の2つです。
辞書で見たように、「庭」という言葉は敷地内で建物以外の部分を指します。これをそのまま「庭園」という場合がまずあります。ただ少し硬い言い方をしただけのようなものです。
もう1つは特に手を入れた部分だけを庭園と呼ぶ呼び方で、この場合「庭」という環境の中に「庭園」という作品または見どころがあるようなものです。
敷地ほぼ全体を庭園と呼ぶのか、それとも作り込んだ部分を庭園と呼ぶのか。ここには混乱があり、名勝登録や解説書などでも両方の考えが混在しています。具体的に言えば、旧大名庭園や豪邸の庭では広場なども含めて庭園と呼んでいることが多く、寺院の枯山水などでは造型の部分だけを庭園と呼ぶことが多いようです。
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