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園路

【園路の重要性】

​園路とはもちろん路であって、人が移動する空間なのですが、それだけではありません。散策しながら周りの風景を楽しむ場所でもあるし、場合によっては路自体の美しさ、趣が見所になります。

特に茶庭の場合、庭=通路であり、通路を美しく趣のあるようにしたものが茶庭だと言えます。通路なので、止まってよく見るというよりは通過しながら感じるものです。

江戸時代の池泉回遊式庭園は茶庭の影響を受けている (茶庭的なものを取り込んでいる) とされますので、ここでも路は重要となります。例えば「見え隠れ」「シークエンス」などの概念は、池泉回遊式庭園を語る上で欠かせない概念ですが、ここには路が関係しています。

【路が関係する景観概念】

・見え隠れ

​「見え隠れ」とは、景観に見える部分と隠れる部分があり、見る人が移動するにしたがって見える部分と隠れる部分が変化することです。

『日本庭園史大系』によると、江戸時代前期には特に見え隠れの変化が大きい庭が造られました。具体的には、池をまわる園路が一旦少し池を離れ、池との間に築山などが来て池が完全に隠れるような庭園です。このように園路が一旦池を離れる(見え隠れの変化が大きい)庭園の例として、重森三玲は桂離宮庭園、小石川後楽園、栗林公園を挙げています。

​・折れ曲がり

「折れ曲がり」とは折れ曲がった線的な空間、例えば、折れ曲がった路の左右を立木などで囲ったものです。行先となる場所や建物を直接見せないため、少しの緊張感と期待感を持たせる効果があります。『造園の手引き』では折れ曲がりの好例として慈照寺(銀閣寺)のアプローチ空間を挙げています。

・シークエンス景観

視点を移動させながら次々移り変わっていくシーンを継続的に体験する景観です。具体的には散策路での歩きながらの景観や道路からの自動車等から見た景観のことです。

・ビスタ景観

​​方向性の強い景観。例えば、まっすぐな路の両側を立木で囲ったような場所の景観。桂離宮庭園などで見られます。

【各種の園路】

・土、砂利の路

もっとも古い形態です。園路そのものの存在感は強くありませんが、「このことが逆に周辺の地形・植栽等を強調することになり、双方合わせて、さりげない自然な風情の空間を生み出すことになる」 (『造園の手引き』)というメリットがあります。一方で土砂の流出、飛散、ぬかるみなどは避けられません。

・石畳、延段

石畳などと呼ばれる比較的幅広の舗装路は入口から主要なエリア (住宅であれば門から玄関) への通路に使われたり、公園の主要路に使われたりします。

延段と呼ばれるものは、人が通る幅だけ石敷きにした通路で、切り石だけのもの、切り石と自然石を混ぜたもの、自然石だけのものがあります。切り石だけのものが最も格式高いとされますが硬さも感じられるので、風流を求められる庭では主要建物へのアプローチなどに限定的に使います。一方、自然石を混ぜたもの、自然石だけのものはカジュアルな場所、自然な風情の場所などに使います。

・階段

傾斜が急な部分の園路に使います。広場の一部になった幅広の階段もあります。

​階段を上り下りするときは足下を見ることが多くなり、この時間が長いと快適でなくなるということです(『造園の手引き』)。

飛石

​飛石を園路に使うことは茶庭で始まり、それが回遊式庭園にも取り入れられたとされます。小さな茶庭と広い回遊式庭園との共通点。

上原敬二が「飛石は道をゆく上に実用のものではない」と書いているように、移動だけを考えれば飛石は​不便なものです。あえて飛石を使う理由の1つは見た目のため、もう1つにはゆっくり歩かせたり下を向かせたりするためでしょう。

通路でもあり、視点でもあり、見られる対象でもあります。

【公園の路】

公園 (public garden) など不特定多数が利用する庭園では歩く場所としての機能が優先されるので、幅広で平らに舗装された路が多くなります。舗装材料としてはアスファルトなど補修の簡単なものが一般的です。

【模様としての園路】

見通しの良い庭園では、園路が描く模様も景色になります。例えば岡山後楽園の路が描く模様がその例です。重森三玲は『日本庭園史大系』の中でこれをクリエイティブなものとして評価しています

【参考文献】

重森三玲 『日本庭園史大系』

上原敬二 1996 『庭園入門講座8 軒内・園路・池泉石組』 加島書店

京都府造園協同組合 2016 『造園の手引き』 誠文堂新光社

戸田芳樹、野田勘治  2021 『日本庭園を読み解く ~空間構成とコンセプト』  マルモ出版

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