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​飛石と沢渡(沢飛石)

飛石とは、庭園を歩くために飛び飛びに配置された石のこと。初めは露地に設けられ、後のほかの庭にも使われるようになった。小さな茶庭と、広大な回遊式庭園の共通項、それが飛石。飛石を置くことを「打つ」と言う。

飛石を打つようになった最初の目的は着物や履物が土や草露で濡れるのを防ぐことだった、と説明されることがある。とはいえ、平らな舗装の方がもっと歩きやすく履物も汚れないのだから、園路を飛石にするのは結局は作り手の趣味と言える。上原敬二も「飛石は道をゆく上に実用のものではない」と書いている

(上原敬二著『庭園入門講座8 軒内・園路・池泉石組』 1969年 加島書店)

飛石は足を置く位置を指定することになる。これによって、庭を歩く人の行動を庭の設計者がコントロールできる。たとえばわざと歩きにくいように石を配置すれば、歩くスピードを遅くしたり下を向かせたりすることができるだろう。

桂離宮など江戸時代の池泉回遊式庭園では、飛石のこのような効果が活用されているという。例えば下を向かせることで苔や水の綺麗さに目が行くようにしたり、目を上げたときの景色が印象的になるようにする、といった使いかただ。前記の上原の本によれば

「(前略)飛石の上を歩く人はゆっくりであるため足もとや周囲のものをよく注意しやすい、立ち止まってあたりの庭をながめまわすこともあろう、そういうところこそ飛石がふさわしいのである」

​「苦心してつくった庭の趣を客人に見てもらいたいとき、足早に素通りされたのでは本意でない、そこでゆっくりとまわりを見ながら、足もとに気をつけながら歩かせるためには飛石は役立つ」

​とのことだ。

ただし飛石が長くなると足もとに気をつけて歩く距離が長くなり、ストレスを感じる。広い回遊式庭園の場合主要園路は歩きやすくし、飛石は局所的にしか使わないのが多数派で、桂離宮庭園が飛石を大々的に使っているのは異例のことだ。有名な例と典型的な例は違うらしい。

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