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どこに造るのか

庭を廻った数が数十のころから、庭を造る場所にパターンがある気がしてきました。それはアプローチ、玄関前であったり客間の前であったりします。

庭をどこに造るのかという問題は、何のために(何を期待して)庭を造るかという問題にも関係します。庭園の立地や部屋との位置関係を考えれば、人が庭に何を望んでいるのかがわかるかもしれません


◆アプローチ、玄関前
例えば茶庭は茶室前にあり庭全体が茶室へのアプローチですが、それ以外にも様々な施設や建物で、建物へ至る通路や建物前に庭園が造られていmasu

。これらの庭は鑑賞式、回遊式といった分類に当てはまらないので「素通り式」とでもいっておきます

​アプローチや玄関前の庭をきれいに整えるのは、客を迎えるという意味でしょう。

真光寺庭園

◆重要な客人を迎える場所、公式に人と会う場所
大きなところでは二条城二之丸庭園などがそうです。お寺などにある客殿と呼ばれる建物、お寺・御殿などの表書院と呼ばれる部屋、大きな農家のザシキと呼ばれる部屋、などは客人を迎える場所ですが、その前に庭園が造られてきました。

​客人を迎える場所に庭を造ることは格式や儀礼の一部だったと考えられます。

二条城二之丸庭園
旧佐野薬局 (現:商いと暮らし博物館)

◆ロビー、ラウンジの前
これもある種の「客」を迎える場所ですが、ホテルなど不特定多数が利用する施設のロビー・ラウンジに面して庭が造られています

今治国際ホテル「瀑松庭」

◆居間、居室の前
客を迎える場所とは逆に、住人が日常を過ごす場所です

例えば龍安寺方丈の場合、南(儀式、接客空間)に白砂の庭がある一方、方丈の北(居間兼書斎がある側)には普通に植物の庭があります

このような生活空間の庭はくつろげる庭であることが多く、「くつろぎ空間の演出」が庭を造る動機の1つだと考えられます

龍安寺方丈北側の庭

◆空きスペース、デッドスペース、跡地
良く知られた話ですが、方丈南庭は本来儀式を行うために場所をキープしていたもので、儀式を室内で行うようになってから使わなくなったスペースに石などを置いたものだとされています。
施主は庭園を積極的に造りたいとは限りません。空きスペースを放置した感じが嫌という消極的理由で庭園として整備することもあります

龍安寺方丈庭園

◆造成などの工事があったところ

造成工事、防災工事などは景観を損なうことが多いので、その修復として木を植え、石を置いたりします。この時ちょっとデザインに凝って手をかければ、それはもう庭園と言ってよいでしょう。広島県の宮島にある紅葉谷川庭園砂防施設(国指定名勝)はそのような庭園です

修復というわけでもありませんが、粉河寺庭園(和歌山県)も、工事があった場所に造られた庭園です。やや傾斜した土地に平らな用地を造るため敷地内に段差ができていますが、その段差部分の土留めが、後世庭園として評価されたものです

修学院離宮の大刈込も(これは庭全体ではありませんが)、ため池のために築かれた土手に造られています

紅葉谷川庭園砂防施設
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