歩く庭と見る庭、何が違う?
「(池泉)回遊式庭園」という単語だけはたいていの解説書に出てきます。ですが見るだけの庭(鑑賞式庭園)とは技術や面白みの点でどう違うのか、庭を訪れる人はどういうつもりで楽しめばいいのか?こういったことは解説書にあまり書かれていません。
ここでは私が見かけた「回遊式庭園ならではのもの」を通じて回遊式庭園の特徴を考えてみたいと思います。
わかりやすいように先にポイントを書いてしまって、その後具体的にみていきましょう。ポイントは3つあります。
【回遊式庭園の3つのポイント】
1. 順序とつながり
普通、回遊式庭園は全体を一度に見ることができず、歩いていく順序にしたがって一続きの風景を見ることになります。このことは音楽にたとえられれます。
2. 身体性
人は体を使って歩くことで、ものの見方や感じ方も影響を受けます。例えば歩きにくい場所を歩く場合、下を向くので低い位置にある物に気づきやすくなり、歩く速度はゆっくりになり、距離を実際よりも長く感じるでしょう。
3. 空間体験
歩く庭では自分が庭の中にいて、空間を感じます。
ある場所ではほどほどの広さで囲まれているのを感じ、別の場所では狭く感じ、また別の場所では明るく開放的な空間を感じでしょう。
では、具体例を見ていきます
【回遊式庭園で見つけたもの】
・直線路と折れ曲がり
直線の路が時々あります。通常は中門までのアプローチか、庭の浅い(入口から近い)所にあるものです。両側を立木で囲うのが定番のようですが、そうでないこともあります。直線が50mを超えて続くことは少なく、あるところで折れ曲がって路の行きつく先は見えないことが普通です。門のところで折れ曲がっていたり、門から向こうは曲線の路で先が見えなくなっていたりすることもあります。
[何の意味があるのか]
奥行きを感じる景色となる
路の先が気になる
奥へ進むべきところだというのが自然とわかる
・視界を遮る高さの築山
待合の前、園路の脇などに、視界を遮る高さの築山(人工の山)を築いていることがあります。
[何の意味があるのか]
早くから多くが見えすぎない
築山のあるところとないところで見え隠れになる
・屈曲
路をことさらに曲げている例が時々あります
[何の意味があるのか]
山路っぽい感じがする
先が見えない
進むにしたがって見え方が変わる
・歩きにくい園路
歩きにくい園路、足元に気を付けないといけない場所が時々あります。例えば桂離宮庭園の飛石は小さく、場所によっては間隔も狭すぎです。他に手すりの無い狭い橋や幅と高さがばらばらの石段も、足元に気をつけないといけません
[何の意味があるのか]
自然と下を向くので低い位置にあるものに目が向く
目を上げたときの景色が印象的になる
歩くのがゆっくりになる
・狭い空間
窮屈なくらい、圧迫感を感じるくらい狭い通路が時々あります
[何の意味があるのか]
エリアの区切り、ちょっとしたスパイス、
狭い場所を抜けて次のエリアへ移動することで気分が一新され、移動先が一層印象的に見える
・一見ただの林
一見ただの林というのも、広い回遊式庭園にはよくあるものです
[何の意味があるのか]
木に囲われた空間は落ち着く
「林を抜けると○○だった」という、体験的な演出になる
【まとめ:回遊式庭園は体験的】
以上をまとめると回遊式庭園は
・自分がそこにいる(空間体験)
・歩いて移動することで風景が変化する(順序とつながり)
・体を使って歩くことで感じ方も変化する(身体性)
といった特徴があります。一言で言えば体験型なのです。
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