庭をどう分けるか1 鑑賞以前の視点から
【鑑賞以前の視点から】
庭園の解説書を読むと、枯山水とか茶庭とか、鑑賞式とか回遊式とかいった分類が書かれています。これらは研究や鑑賞のための分類です。ですがここでちょっと疑問があります。
「鑑賞以前のことは考えなくていいの?」
鑑賞以前の分類とは何か?
ここでたとえ話をさせてください。例えば建築であれば、五重塔と住宅は全く違うものだし、庁舎やオフィスはまた別だと誰でも知っています。なので五重塔のデザインを基準にして住宅のデザインを批判したりはしません。こういったことが建築についての鑑賞以前の常識です。
また例えば陶芸であれば、陶器の置物と陶器の皿は別物だと誰でも知っていますし、丸い皿と四角い皿、大皿と小皿は用途が違うことを知っています。これが鑑賞以前の分類であり鑑賞以前の常識です
ここで話を戻して、庭園についてはどうでしょうか。私たちは鑑賞以前の常識を持っているでしょうか?というわけで鑑賞以前の観点から見た分類のお話です。
*実用性があるかどうかで分ける
庭園には実用的なもの、実用性の薄いもの、実用性の全くないものがあります
庭でガーデンパーティやイベントを行なったり、散策を楽しんだりするのは実用的な庭です。居間から見る景色となるなど雰囲気づくりに役立つ庭は少しだけ実用性があります。これに対して、お寺の枯山水のようなものは大体が実用性度外視です
*独立か付属かで分ける
庭園には、庭が施設のメインであるもの、建物に付属するもの、建物と庭園が独立しているものがあります。庭がメインというのは公園や庭重視の別荘など。建物に付属する庭とは玄関までのアプローチの庭や応接間の飾りのような庭。建物と庭園が独立というのは例えば重森三玲作の東福寺方丈庭園で、これはお寺の敷地にはあるがお寺の機能(仏事や修行)とはまるで関係がありません
*外向きと内輪向きで分ける
庭園には来客を迎えるための庭と、自分たち(家の住人など)が楽しむための庭があります。大まかに言えば表庭は来客を迎える庭にある傾向があり、裏庭は住人が楽しむ庭であることが多いです。ただし応接間が裏にあるなどの理由で、裏庭が来客に見せる庭であることもあります
*良さの方向性で分ける
だいぶ乱暴に分けると、楽しいもの、落ち着くもの、アート的なものがあります
このページの下の方に例を載せています
【例】
・実用性あり(会場として) ・庭が主 ・来客と遊ぶ ・楽しい
・実用性あり ・庭が主 ・客が遊ぶ ・楽しい
・実用性少し(雰囲気づくり+少し散策もできる) ・建物に付属 ・来客に見せる
・実用性少し(雰囲気づくり+少し散策もできる) ・建物に付属 ・来客に見せる
・実用性少し(雰囲気づくり) ・建物に付属 ・住人と友人が見るプライベートな庭 ・落ち着く
・実用性あまりない(一応通路になっている) ・建物に付属 ・来客が見る
・実用性あり(住環境) ・住居に付属 ・プライベート ・落ち着く [写真AC]
・実用は全く考えていない ・建築とは独立 ・見せるための庭 ・アート
・実用は全く考えていない ・庭がメイン ・見せるための庭 ・アート
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