山の表現
【はじめに】
庭巡りをしていると、日本庭園にしばしば山モチーフの表現が出てくることに気づきます。日本庭園は池が中心だと書いてある書籍や記事もありますが、実は庭園によっては「山」に力を入れているようです。
今回は日本庭園の中の「山」について私見を書かせてもらいます。
【山の表現方法2系統】
山の表現は様々ですが、大まかに言うと2つの系統に分けれらる気がしてきました。
1つは土の盛り上がりや石を使って、山全体を外から見たように表現するもの。枯山水の山はだいたいこの表現方法です。土の盛り上がりだけでも山を表しますが、石を組み合わせると険しい山を表すのがお約束のようです。
(ちなみにこのような表現を縮景とよびます。山など大きなものの景色を、小さく縮めて庭に取り入れるという意味です。縮景には広義の縮景と狭義の縮景があり、狭義の縮景とは実在かつ特定の名所、例えば富士山、を表すものをいいます)。
もう1つは立木、下草、苔などを使って、自分の周りが山であるように表現するもの。茶庭における山の表現はこのタイプです。
このように2系統に分けて考えてみると、江戸時代の池泉回遊式庭園における山、例えば兼六園の山崎山では両方の表現が併用されているように見えます。つまり、土の盛り上がりを山に見立てつつ、植物で山の情趣を表現しているということです。
池泉回遊式庭園は枯山水的なものも茶庭的なものも含む総合庭園とされますが、山の表現からもそれがうかがわれます。
【山の表現についてもう少し】
山の表現には次のようなものがあります。
・盛土の山(築山)を山とみなす
・盛土に石を組み合わせる
・石だけで山とみなす
・山のイメージのある木(モミジ、アカマツなど)を植える
・コケ、シダ、ツワブキなどのグラウンドカバーを植える
・滝や渓流を作る
・草庵のようなものを作る
・細く曲がった、見通しの悪い園路を作る
【「山」があらわすもの】
ここで少し見方を変えて、「なぜ山を表現したかったのか」考えたいと思います。この問いは「山にはどのような良いイメージがあったのか」という問いにつながるでしょう。
・ほとけの住む場所
・物語や和歌の舞台となった風流な場所
・喧騒を離れた静かな場所
・仕事やしがらみを離れて、自分の価値観を追求できる場所

大徳寺龍源院の須弥山。抽象的、象徴的

智積院の廬山。築山に石と刈込を使用。やや具象的

水前寺成趣園の富士山。ちなみこのように実在する特定の場所を表すのが狭義の縮景 (写真:キロクマ)

栗林公園の小普陀(普陀落山)

京極庵「山里の庭」
