仙石庭園で石マニアの熱量に触れる
更新日:2023年8月2日
[庭石のために庭がある、逆転した庭]
仙石庭園は広島県のある医師が石を集めて造った、石に特化した庭園。石の量は総計で3千トンほどになる。これだけの規模でありながら完全に個人の趣味で造られているのが特徴。
【立地と配置】
庭は傾斜地の田園地帯にある。上下二段に平らな場所が造成され、それぞれが庭園になっている。上下の段を結ぶ通路の横にも石が置かれている。入口、レストラン、資料館など主要建物は上の段(南の段)にある。
大きな地形としては大きめの池が3つ(他に小さい池もあり)あり、落差15mの人工滝があり、仙石富士と言う富士山型の築山がある。写真は仙石富士の上から上ノ池を撮ったもの。左奥の大きな建物が資料館で、入口もその付近にある。この写真が上の段のほぼ全景(ただし撮影地点の仙石富士を除く)で、写っていない右側に下の段がある。
ちなみに、上の池に石組があまりないのは富士五湖になぞらえているからだと作庭者が書いている。
それでは仙石庭園の印象3点を書いていこう。
1. 石のために庭がある
・護岸石組や滝石組もあるが、置いてある石 (土留め等の役割を持たない石)はそれ以上に目立つ。深く埋めた石は少なく、平らな地面に置いてある石が多い。あまり植物と組み合わせず、石単体で見せようとしている。植物があるとしても石の下や後ろで、石を隠さないようにしている。石には番号が振られていて、パンフレットと照合できる。これらを総合して、石の展示場のような印象を受ける。鉄道なり模型なりのマニアが私設博物館でコレクションを展示している例が時々あるが、あれの庭石バージョンだと思った。ここでは石の展示がメインであり、庭園は展示台、あるいはジオラマベースの役割を果たしている。
公式サイトには作庭者自身が文章を寄せているが、それを読んでも、作者の関心はほぼ石にあることがわかる。その文章には石を集めるようになった経緯や、石の配置へのこだわりが書かれているが、石以外のことはほとんど書いていない。
彫刻を展示するための「彫刻庭園」というものがあるが、仙石庭園は言ってみれば「珍石庭園」だと思う。
・大体ずっと「路の脇に石が置いてある」風景が続く。
この写真は上の段南部のもの。
護岸石組もある。これは下の池。色とりどりの石を混ぜて使っているのが自己流のこだわりなのだろう。
これはワニ池
たまに大きな石組もある。パンフレットによるとこれは須弥山。
2. 自己流
上の写真で多色の石を組み合わせているあたりが自己流。別の場所では石が別の石に寄りかかっていたり、乗っていたりすることもある。橋添石!?が大型化して門柱みたいになっていたりもする。
3. アクティビティがある
予約制の食事場所があり、ピザ焼き体験ができるピザ釜があり、バーベキュー用のかまどもある。どれぐらいの需要があるのかは不明だが、使える遊べる庭園には賛成。
【感想】
石が好きならばきっと楽しめる。石好きでなくても、ここがきっかけで好きになる可能性も少しはある(見た目の面白いキャッチ―な石もあるので)。あと、異空間を感じた人もいる。私は異空間というより展示場だと思ったが、マニアの熱量みたいなものはあったかもしれない。
あと1つ思ったのは、冬に行ったのは失敗だった。石の庭園だからあまり季節感が無いかと思ったのだが、行ってみると芝生の面積が広く、枯れた芝生のために寂しい感じになっていた。春から夏のどこかで行けばもっとよかっただろう。
最後に、造った人の思いだとかバイタリティだとかについて、私からはうまく語れないので「おにわさん」の記事にリンクしておく。
【基本情報】
・施設の性格:観光庭園?個人の道楽?石の博物館?
・公開状況:公開(有料)
・作庭時期:現代
・アクセス:
JR利用:新幹線東広島駅からタクシーで20分余り。または在来線西条駅北口からタクシーで約10分
自家用車利用:山陽道西条I.C.から約10分。駐車場(100台分)は、2021年時点では余裕あると感じる。
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