由志園の郷土愛と志
更新日:1月23日
【概要】
島根県の大根島にある由志園 (ゆうしえん) は1975年に開園した観光庭園。
面積約4万平方メートルの回遊式庭園で、ボタンに力を入れており、ボタンを池に浮かべる演出で有名です。
またミストの演出やアーティストとのコラボでも知られていいます。
【由志園とボタン】
由志園はボタンを池に浮かべる演出で有名ですが、なぜボタンなのでしょうか。それはこの地方の産業史と、由志園がつくられた事情に関係があります。
公式サイトによれば由志園の「志」とは大根島に産業を興そうという志のこと。
大根島は人口密度が高い一方で島内に働き口は少なく、行商や出稼ぎが盛んでした。
この行商で売られていたのがボタンです。大根島のボタン栽培は17世紀中ごろに始まったようですが、1955年頃、シャクヤクの台木にボタンを接ぐという栽培技術が開発されると生産量が増え、行商の主要品目になりました。1960年代には、農家の女性がボタンの行商で島を離れる例が多かったそうです。
このボタンの行商に代わり、島内で働ける産業として構想されたのが由志園でした。
政府発行のオンラインマガジンによれば、由志園の関係者が次のように話しています。
「由志園の初代園主である門脇栄は、農家の子どもたちが、ボタンの行商に出た母親の不在で寂しい思いをしていることに心を痛めていました。そこで島の新産業として観光業を育て、女性たちが行商に出なくて済むようにと建設したのが由志園でした」
既にあったボタン栽培という産業を生かしつつ、ボタンの行商に代わるものとして構想されたので、由志園とボタンには特に深い関係があります。
【由志園の地方色と愛郷心】
ボタン以外の点でも、由志園は地元の大根島とつながりがあります。
まず石組には地元産の石を多数使っており、地方色があります。由志園のある大根島は火山の島なので、火山ガスで気泡のできた石が多いようです。
また、露出した溶岩を景色とした場所もあります。
刈込はドーム型が連続するものが多く、同じ島根県にある足立美術館庭園との類似が感じられます。
【歩いた感じ】
話は変わるのですが、個人的なテーマである路についても書いておきましょう。
主要園路は平らで舗装されていますが、路を屈曲させたり路端の様子を変えたりすることで、平らなりに変化をつけています。路は池から離れた木々の間や建物の間を通ることが多い印象です。そのため視界は制限されていますが、数か所で橋を渡る時に視界が広がります。ルートの一部は建物内を通っています。坂を歩きたい人は南部のわき道に自分から入れば少しは坂があります。延段のデザインを場所によって変えるなど、路面にも変化をつけています。
【利用・施設】
懐石料理からそばまで、内容や価格帯の違う食事処が団体用3つと個人向け1つの計4つあり、加えてカフェもあります。園内でも眺めの良い場所が観光客用に用意され、庭を見ながら食事ができるのは現代庭園の良いところです。
また高麗人蔘についての展示施設や、まちの駅、ボタンの販売所が併設されています。
【まとめ】
由志園は大根島に産業を興し、出稼ぎの必要を無くするという志の元に造られました。誰かの援助をあてにした庭園でもなく、特権と結びついた富によってつくられたのでもなく、自力で稼ぎ、むしろ人を助けるという点は高く評価されるべきだと思います。
【評価・評判】
由志園は松江市の中では特に人気の観光地で、2019年にはゴールデンウィーク期間だけで6万人の入場者がありました。
評価も高くSukiya Living Environment Rankings (2019年12月)で25位にランクされています。
口コミは花や演出に注目したものが多く、庭を見ながら食事ができるところや、手入れの良さに言及した口コミもあります。
否定的な口コミとしては入園料(通常大人一人800円、イベント時1000円)がやや高いというものがあります。
【基本情報】
・施設の性格:庭園を中心とした観光施設
・庭の性格:観光庭園。
・作庭時期:現代
・所在地:〒690-1492島根県松江市八束町波入1260-2
・アクセス:
JR松江駅から
松江市営バス(遠回りする)で約60分
タクシーで20分~30分
松江境港シャトルバス(本数少ない)で約30分
・公開状況:公開 (有料)
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