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中津万象園は松がすごい

更新日:3月10日

[地元企業とサポーターに支えられた庭園]

【中津万象園について】

中津万象園(なかづばんしょうえん)は丸亀藩主京極家の大名庭園です。庭にある松が日本の名松100選に選ばれているほか、現存する日本最古(かもしれない)煎茶室があることでも知られています。


邀月橋と水連橋
邀月橋と水連橋

​保存公開されている大名庭園といえば県などの自治体が所有・運営しているところが多いのですが、​中津万象園は民間の所有です。様々な人の手を転々とし、一時は荒れていた庭園を1970年に地元の建設会社社長が購入。中根金作の監修により12年をかけて修復・改修し、1982年から公開しています。中津万象園の修復と維持によって、この建設会社は2006年のメセナアワードを受賞しました。

園内には美術館があり、バルビゾン派の絵画など(前記の社長のコレクション?)を展示しています。「保存と活用の両立」、「保存費用の捻出」に悩んで模索したもののようです。


【配置など】

池は1つ、そこに8つの島があり、京極家の父祖の地である近江の八景になぞらえているといいます。庭の南東側は開けた地形で見通しが良く、特に邀月橋(ようげつはし)という反り橋から北西を見ると広がりが感じられます。庭の北西側には7つの島があり、随分と島が混んでいる印象を受けます。島同士、島と岸は短い橋でつながっていて渡ることができますが、橋の多くは改修時に追加されたり変更されたりしたものです。


船着き場がいくつもあった痕跡があります。現在は橋のために舟の移動範囲が狭くなっていますが、もともとは舟遊びも重視した庭だったのでしょう。


【見所】

・大傘松、または千代の傘松

大茶屋の南に直径15mの傘のように広がった松があり、母屋から見ると窓一杯の大きさに見えます。

「大傘松」はパンフレットや公式サイトでの呼び方。「千代の傘松」として日本の名松百選に選ばれています。

大傘松と母屋(右奥)
大傘松と母屋(右奥)


母屋から見た大傘松
母屋から見た大傘松

この大傘松をはじめとして1500本の松があるそうです。松の次に多いのはサツキなどの常緑低木で、落葉樹や花草は多くありません。

池と松の風景
池と松の風景

サツキ、キショウブなどの咲く風景
サツキ、キショウブなどの咲く風景

・景物

橋はいくつもあり、デザインを一つ一つ変えています。

最大の橋は

「水蓮橋」は名前こそ橋ですが実際は池を渡る飛び石で、上面に葉脈のような模様を彫り、ハスの葉に見立てています (冒頭の写真)。


・建物

日本庭園としての万象園の中心となるのは母屋と呼ばれている建物で、茅葺・入母屋造り。池の南岸にあるが池からは数メートル離れていて池は見えません。飛石を伝って船着き場に出るようになっています。​

母屋の西にある高床式の建物は「観潮楼」と呼ばれていますが、現存する最古の煎茶室の可能性がありもので、丸亀市の文化財に指定されています。この煎茶室は『新建築 臨時増刊号 a+u 茶室33選』で取り上げられました。


母屋 (左) と観潮楼 (右)
母屋 (左) と観潮楼 (右)

【施設・利用】

トイレ、休憩所あり。無料駐車場あり。

すでに書いたように園内には小さい美術館があります。

海望亭という無料休憩所があり、椅子、トイレ、自販機、Wi-Fiサービスが用意されています。一応海も見えますが、それよりもグラウンドと造船所がよく見えます。


庭とは別の入り口で懐風亭という和食レストランがあります。

借りられる部屋、施設がいくつかあります。100席規模の会議室は団体の食事などに利用可能。

前撮りや園遊会などのイベントについては個別に相談してください。


【改修以前の万象園】

改修以前の万象園の姿がわかる資料としては、1918年(大正7年)に奉納された「万象園真影」と題する絵馬や戦前の写真付絵葉書があります。

絵馬「万象園真影」は普段公開されていない上かなり見づらくなっているらしいのですが、模写がネット上に存在します(「鈴木商店 万象園古図」で検索)。

この図を見ると池の北側にモノが少なく、そもそも池の北に陸地があまりないように見えます。絵馬が描かれた後1946年の南海地震で万象園は1m近く地盤沈下し、高潮対策として防潮堤が必要になった(そして海が見えなくなった)そうです。さらにその後1970年からの改修で美術館建物が追加されるなどして万象園は現在のような姿になったといいます。

絵葉書については地域情報誌「マルータ」のWEB版で見ることができますが、現状とは様々な点で異なる万象園が写っています。大まかに言うと当時は今よりも植栽が少なく、庭から讃岐富士がよく見えました。母屋と観潮楼はあまり変わっていませんが、観潮楼の西にはかつてもう1つ建物があったようです。千代の傘松も写っていますが、現在の方が立派に見えます。写真の中の邀月橋は現在のものより反りが緩いものです。


【中津万象園とサポーター】

中津万象園はサポーターの寄付に支えられた庭園です。2021年に公開された活動報告書 (ケースステートメント) でも、収入を寄付に依存している様子が分かります。次の表は活動報告書に記載された収入を表にしたものです。


中津万象園の収入 (単位:千円) 3年間の平均

民間からの寄付金

35,531

入場・入館料収入

14,128

賛助会員

3,866

公的な補助金

5,000

その他

248

58,773

寄付や支援が収入のメインで、入場、入館料は収入全体の約四分の一にとどまります。中津万象園には貸室、レストラン、土産物店もありますが、これも大きな収入にはなっていません。


ちなみに中津万象園の支出は年5千万円規模、庭の規模は面積約35,000㎡、常勤職員8名となっています。




​【個人的メモ】

基本的に松の庭園。モデルコースが1000mくらいで、ざっと見るだけなら30分もかからないでしょう。1時間あればゆっくり回れます。昭和以降の改修(近代的な建物)が多いので、気にする人は気にするかもしれません。​

庭を購入した建設会社の初代社長がどういうつもりだったのか明確ではありませんが、息子である次期社長に、庭を売らないようクギを刺しているところを見ると、文化財保存の意図もあったのではないかと思います。


【基本情報】

・施設の性格:大名の別邸

・庭の性格:散策、舟遊び、気晴らし、趣味活動(詩作など)に使った庭園

・作庭年代:江戸時代

・公開状況:公開(有料)

毎週水曜日定休。

・アクセス:

JR丸亀駅よりタクシー 約6分

瀬戸中央自動車道 坂出北ICより 約8.5㎞ 車で約15分

高松自動車道 善通寺ICより 約5㎞ 車で約10分

・別名、旧名:金倉別館、中津御茶所、中津別館

・施設、設備:

美術館 (丸亀美術館)、レストラン (懐風亭)併設

トイレ、駐車場、土産物店、コインロッカー、自動販売機


【外部サイト】

中津万象園(公式サイト)

地域の宝物 中津万象園を後世へ|ビジネス香川 建設会社社長のインタビューなど





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