庭園と立地
更新日:2023年8月26日
「この庭はなぜこういうデザインなのか」を考えるとき、立地も重要な要素になると思う。不利な要素があればどう克服し、有利な要素があればどう活用するか、それによって庭園のデザインも変わってくるはずだ。まず克服例、その後活用例を見てみよう。
まずは有名どころで、海沿いで真水が手に入りにくいため海水を引き入れたケース(旧徳島城表御殿庭園)。当然潮の干満で水面が毎日上下するので、護岸も高さがある。
次にこれも有名な例だが、桂離宮は川沿いの低地にあり水害リスクが高い。建物が高床になっている点と「桂垣」という竹垣が水害対策として有名だが、実は庭の池も水害対策と思われる改装を受けている。初期の桂離宮は、『桂別業図』によれば、池が東西に分かれていて東側の池が桂川につながっていたのだが、後に現在のように改装されている。最初桂川につながっていた理由は舟遊びのため、改装の理由は、東の池が桂川につながっていると川の増水の影響を受けやすくリスクが高いためと思われる。
続いては新しい庭だが、梅小路公園公園朱雀の庭。
JR嵯峨野線に接しているが、高架沿いの部分が高くなっていて、高架や線路は見えなくなっている。当然写真にも写らないのだが、写真奥の高い所の向こうが嵯峨野線の高架の筈だ。
次の例は姫路駅前の公園、愛称「キャッスルガーデン」。
ふつう駅前というのは人がせわしなく通過する場所だが、ここでは人がとどまるような雰囲気を造ることが求められた。そのための工夫の1つが、広場を半地下式にすることだ。
立地の活用例も見てみよう。
まずは兼六園。兼六園は台地上の平地から台地の斜面にかけて造られている。自然の高低差を利用して滝が造られているほか、台地上には明るい景色、斜面下には薄暗い山森の景色を造っている。2つの景色は、水平距離が近いにもかかわらず高低差のため混じることがない。
傾斜地にある庭では段差を区切りにして塀や柵を造らない例が時折ある。
写真は徳島県の本楽寺。吉野川南岸の高台にある。
露出した岩盤を利用し、厳しさと深山の趣を出した庭もいくつも存在する。写真は徳島県の桂国寺。
特殊な例だが、石切り場跡を活用した例というのも存在する。淡路島にある益習館の庭は石切り場跡に残っていた巨石を利用し、石がごろごろする異空間となっている。
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