庭園と視点場
- Masahiko Yano
- 5月20日
- 読了時間: 4分
【はじめに:視点場とは】
多くの場合、庭園は視点となる場所を想定して造られます。この視点となる場所のことを「視点場」と呼びます。視点場を知っておくことで、初めて訪れる庭園でもどこから見れば景色が良いか見当がつきやすくなるでしょう。
当記事では、視点場になりそうな場所や視点場周辺の工夫、視点場からの景色に特色ある庭園の例などを簡単に解説します。
「視点場とは、視点が存在する場所である。すなわち、景観を眺めている人びとが立ったり座ったりしている場所、景観を眺める場所のことを視点場という。典型的な視点場は、展望台のような場所である」

【庭園における視点場:どのような場所が視点場になるか】
ここでは視点場になることが多い場所の例をいくつか紹介します。
・建物
-寺や住宅の建物
寺や住宅などの建物は典型的な視点場のひとつです。
写真は岡山県高梁市にある頼久寺の書院と庭園。書院とは書院造という形式の部屋で、用途は書斎や応接間等各種あります。

伝統的な農家や商家には「ザシキ」と呼ばれる畳敷きの応接間があり、庭は主にザシキから見るように造られます。

-茶屋、主屋
大きな庭の場合、庭で遊ぶための拠点的建物が造られることもあります。茶屋、主屋など呼び方は様々ですが、おおむね共通する点としてある程度の広さがあり、調理場などの設備が整っています。このような建物は当然庭を見る視点として想定されています。


現代庭園でも、食事などのできる大きな休憩所があればそこを視点として庭を設計することはあります。


-あずまや
あずまやとは壁の無い簡単な休憩所のようなもの。庭の飾りでもあります。

・橋
庭園内の反り橋や大きな橋は見られる対象であると同時に視点場でもあることがあります。




・人工の山
土を盛った人工の山(築山)の頂上が展望台になっていることもあります。
大型の築山を築いて頂上を展望台にすることは江戸時代の庭園によく見られます。




・特別な飛石
大きい飛び石や、色形に特徴のある飛石は「ここが視点場だよ」というサインの場合があります。
下の例は京都の無鄰菴庭園で、視点場のサインは路の分岐点にある丸い飛び石です。
・園路のふくらみ
園路が膨らんでいる場所や池の向かって張り出している場所も、視点場の可能性があります。
小石川後楽園などに例があります。
【視点場周辺の設計と整備】
「景観を良好にするには、視対象のコントロールのみならず、視点周辺の植栽や施設整備を行うなど、視点場を空間として整えることも重要となる」
国土技術政策総合研究所 研究資料 公園緑地における眺望保全・再生の手引き(案)
視界の制御
見るべき景色を強調するために、生垣や樹木、石組みでフレームを作ることがあります。これにより、視点が特定の方向に誘導されます。

窓越しの視点

【おわりに:庭園鑑賞時の楽しみ方】
庭園はしばしば、視点となる場所を設定して造られています。
視点となる場所の例は、建物、築山、橋、特別な飛石等です。
建物の中からじっくりと一つの景色を楽しむ「固定視点」と、庭を歩きながら風景を楽しむ「移動視点」の両方を意識すると、庭園の設計意図をより深く感じることができるでしょう。
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