けいはんな記念公園「水景園」
更新日:1月22日
立体的でダイナミックな現代回遊式庭園
水景園は京都府南部(奈良・大阪から近い)の丘陵地帯にある、現代の回遊式庭園。第 11 回都市公園コンクール設計部門 建設大臣賞受賞。平成 6 年 (1994年) 度 日本造園コンサルタント協会賞 特別部門受賞。設計は朱雀の庭などを手掛けた空間創研。
【水景園について】
水景園は京都府相楽郡精華町(そうらくぐん せいかちょう)のけいはんな記念公園の一角にある庭園。北西側には里山風の森と散策路がある。南東側では特色ある設計を見ることができる。以下基本的に南東部について書く。
・長大な橋が庭園を東西に区切る
地形は元々あった谷を利用し、高低差が約 10 mある。谷の上流側 (最上部) から、谷の中にある建物 (観月楼) に向かって長さ 100 mを超える長大な橋がある。この橋は観月楼への通路であると同時に、高い視点から庭を一望できる場所でもあり、庭を東西に緩く分ける境界でもある。
・橋から東を見た風景
橋から東を見下ろすと巨石が林立している。公式サイトによると「高さ6〜7m、重さ20〜40(最大70)tの巨石、約500個からなる延長150mの壮大な空間」。設計企業である空間創研のサイトによると「太古の荒々しい未踏の自然を表象」するものだ。
・橋から西を見た風景
橋の西側は広い空間になっているが、その中で目を引くのが棚田のように段々になった小池。この小池を通して、上の池から下の池へと水が落ちる。
池の南西側には本物の棚田(実際に稲が植えられている)がある。
写真右端に写っているのは小規模コンサートなどができるステージ。
水景園のできた1990年代は棚田などの文化的景観が注目されてきた時期で、1995年にスペインの棚田が世界遺産に登録され、日本の棚田保護政策にも影響を与えたとされる。水景園はなかなかタイムリーな庭なのだ。ちなみに棚田モチーフはけいはんな記念公園の芝生広場にも使われている。
・谷の下
谷の下に降りるには橋の東端あたりにある階段か、観月楼の階段、エレベーターを使う。
下りた東側では、先ほど上から見た巨石群を下から見上げることになる(立体的な構成!)。ここは切り立った巨石と橋とに挟まれた細長い空間で木も多い。
一方西側は池を中心とした広い空間で、先ほど述べた棚田状の池はここにある。
【感想】
私がこの庭園を知ったのは『日本庭園と風景』(飛田範夫)『造園の手引き』(誠文堂新光社)という本にこの庭の写真(小さい白黒写真だが)が載っていたから。ユニークな設計や特色ある要素を探していた時に見つけた。
現地を訪れて歩いてみると、見下ろす景色と見上げる景色、広い空間と狭い空間で
全体的には現代的な庭園だが、石橋にはちゃんと橋添石があったのを何か面白く感じた。そういえば朱雀の庭でも、三段の滝や飛泉障りの木といった伝統的技法と現代的な水盤とが共存していた。
【施設・利用】
カフェがあるが、新型コロナウィルス感染症のため席数、営業日とも少なくなっている。研修室を借りることができる。また、一般公開していない夜間に限り庭園を貸切で利用することができ、ガーデンパーティーなどが可能。
(2021年1月情報)
【基本情報】
・施設の性格:都市公園
・作庭時期:現代(平成)
・設計:空間創研
・所在地:〒619-0238 京都府相楽郡精華町精華台6−1 1けいはんな記念公園内
・アクセス:
JR祝園駅、近鉄新祝園駅よりバス 約 9 分
・公開状況:公開 (有料)
【外部サイト】
関西文化学術研究都市記念公園伝統庭園ゾーン 「水景園」 (空間創研の作例集から)
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