天水分「豊稔庭」と豊稔池ダム
更新日:5月22日
[その人と、その場所にふさわしい庭園を]
ダムをモチーフにした珍しい庭園(名前は「豊稔庭」)があるというので行ってみました。行ってきたのは香川県観音寺市の古民家レストラン「天水分」(あめのみくまり)。なぜダムなのか?それはこの古民家の元住人であり店主の祖先でもある加地茂治郎(かじもじろう 1869年~1940年)と関係があります。
【加地茂治郎と豊稔池堰堤】
「天水分」のある観音寺市には、豊稔池ダムというマニア間で有名なダムがあります。この辺りは古くから慢性的な水不足に苦しんでいましたが、大正13年の大干ばつをきっかけに豊稔池ダムが建設されました。
この豊稔池ダムの建設に際して、地元の中心だったのが加地茂治郎です。茂治郎は国や県議会に対してダムの建設を陳情、工事費負担の交渉などを行い、一方で地元の農民を組織してダム建設の労働力とするなど、重要な役割を果たしました。
ダムは1926年に起工、1930年に竣工し、ダム湖(豊稔池)は今も農業用水に利用されています。当時のダム技術を示すものとして2006年に国の重要文化財にも指定されました。
現在豊稔池堰堤の傍に小さな祠がありますが、そこには天水分(水の分配の神)とともに加地茂治郎が豊稔池の守護神として祀られています
【豊稔池ダムと豊稔庭】
ダムをモチーフにした庭ということですが、そもそも豊稔池ダムの形状が、よく見るダムとはだいぶ違っています。石の塔のようなものが5つあり、その間を湾曲した壁でつないだ形状のマルチプルアーチダムというもので、現存例は2つしかありません。
「天水分」のカウンター席から見える「豊稔庭」は豊稔池ダムとそっくりではありませんが、何に似ているかと言われればやはり豊稔池ダムということになるでしょう。石壁があり、柱状の出っ張りがあります。石壁には壁泉があり、壁の下には水が溜まっています。周囲にはシダなど、日陰に強い植物が配置されています
「天水分」にはほかに普通の日本庭園もありますが、私は豊稔庭について書きたいと思いました。豊稔庭は一般的な庭のイメージとはかなり違うが、この店と加地茂治郎と豊稔池との関係を知れば、納得いくのではないだろうか。型通りに造るだけが庭ではない。その人とその場所にふさわしい庭を(言葉だけではあるが)応援したい。
【どんな人におすすめ?】
・豊稔池ダムが好きな人、豊稔池ダムに行った人
・庭のあるところで食事したい人
【基本情報】
施設の性格:古民家利用のレストラン
庭の性格:レストランの装飾、雰囲気作り
作庭年代:現代
アクセス:
公開状況:利用者向け
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