姫路駅前広場「キャッスルガーデン」
更新日:2023年12月19日
【前説】
姫路駅の駅前広場はちょっと変わっていて、地方都市の駅前広場としては破格に贅沢です。どう変わっているのか、それをこれから見ていきましょう。
【人がとどまる駅前広場】
一般的な駅前広場は交通広場です。駅前にバスやタクシーの乗降場があり、人は次々と通り過ぎていきます。姫路駅前広場でも、メインストリート(の延長)より西側はこのような交通広場です。
一方、駅前広場の東半分は「人がとどまる場所」を意図して設計されています。70m×40mほどの広さがあり、北半分はイベントスペースなどになる地上の広場(主に芝生)、南半分は一階分掘り下げた広場「キャッスルガーデン」になっています (なおこのように周辺より掘り下げた広場をサンクンガーデンと呼びます)。
【キャッスルガーデンの地形と造型】
駅前 (通常はせわしなく人が行き来する場所) を憩いの場所にするために、どのような工夫があるのでしょうか。
すでに書いたように、キャッスルガーデンは周囲の土地より掘り下げて1階分低くなっています。その結果、駅を出て周辺の店に行く人が広場を通らないので落ち着いた感じになります。また周囲を囲われた形になるので、その点でも安心感があります。
まずこの雰囲気的な面が、サンクンガーデン方式のメリットです。
サンクンガーデンのもう1つのメリットは立体的な構成ができるところです。キャッスルガーデンの場合、いくつもの階段や石垣をイメージした造形物、階段横のカスケード(これも石垣イメージ)などが立体的に配置されています。加えて広場の南側(駅ビル側)は北側より階段5段分ほど低くなっています。この低くなった部分にはせせらぎがあり、飛石や州浜のようなものもあります。
【キャッスルガーデンの印象】
私が行ったとき、「キャッスルガーデン」には水遊びする子供がいて、それを見守る保護者がいました。段差に腰かけて話し込んでいる2人連れもいましたし、地面にベタッと座って何か飲んでいる人もいました。西側と違って駅前広場の東半分では、人々がそこにとどまって時間を過ごしている印象を受けました。
駅前広場でありながら、人が腰を落ち着けているこの雰囲気はどこからきているのでしょうか。1つにはここがサンクンガーデンだからでしょう。もう1つにはカスケードやせせらぎなど水の存在があるのだと思います。滝やせせらぎは視覚的に楽しめるだけでなく、水音が周囲の喧騒を目立たなくしてくれるからです。
もう1つ感じたのは、立体的な構成の面白さです。地上の高さ、1階分降りた高さ、さらにそこから少しだけ降りた高さと3つの面があり、3方向の階段と1カ所のスロープで結ばれています。なのでこのサイズの公園にしては回遊が面白いと感じました。
【基本情報】
施設の性格:駅前広場
庭の性格:公園、地下街の採光、地上部と地下街の接続など
作庭年代:現代
デザイナー:小野寺康、南雲勝志、渡邉篤志
受賞歴:キャッスルガーデンをふくむ駅前広場と道路が2015年度グッドデザイン賞受賞
アクセス: JR姫路駅北口を出て徒歩1分
デザイナー:小野寺康、南雲勝志、渡邉篤志
公開状況:自由入場、無料
(2022年6月訪問。情報は訪問時のものです)
【外部評価など】
既にみたようにキャッスルガーデンは2015年度のグッドデザイン賞を受賞しています。
また国土交通省の研究機関である国土技術政策総合研究所もキャッスルガーデンを興味深い事例と認識しているようです。
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