都会の庭:大手町 ファーストスクエアガーデン
ファーストスクエアガーデンは東京の大手町にある公開空地、サンクンガーデンです。
大手町の一等地にあるにもかかわらず、2017年のリニューアル以前は人の寄り付かない場所でした。今回はリニューアル後のファーストスクエアガーデンを紹介し、庭の美観、雰囲気が人の行動に与える影響を考える参考にしたいと思います。
本題に入る前に、公開空地、サンクンガーデン、リニューアル前のファーストスクエアガーデンについて軽く触れておきます。
【公開空地】
公開空地とは、ビルなどの敷地の一部を空地 (つまり建物ではない場所) にした上で自由に出入りできるようにした場所です。建築基準法の特例で、敷地のある割合を公開空地にすると容積率などの制限が緩和される場合があります。
公開空地をつくると、企業側にとっては制限の緩和を受けられるメリットがあり、都市環境としては通風や延焼防止のための空き地を確保できるメリットがあります。
公開空地はただの空地の場合もありますが、木を植えるなどして美観を整えることも多くあります。
【サンクンガーデン】
サンクンガーデンとは周囲より掘り下げた半地下式の庭のことです。
特に、都市開発の文脈で言うサンクンガーデンとは、駅前やオフィスビルの足元などにある半地下式の広場・庭園で、都市の真ん中に落ち着いた場所をつくるためにこの形式を選ぶことがあります。
【リニューアル前のファーストスクエアガーデン】
では、リニューアル前のファーストスクエアガーデンがどうだったのか、簡単にみておきましょう。下の絵は当時の写真をもとに描いたものですが、ただの平らなスペースに、お店のサインボードや鉢植えがちょっと出ているだけの殺風景な場所という印象です。
当時の様子について、屋外空間専門ウェブマガジン「ソトノバ」は
「竣工当時(1997)はまだ公開空地自体が珍しかったものの、気づけば「ファーストスクエアガーデン」はただ広々としていて寄り付くところも少なく、都市計画上の「公開空地」としてしか機能していない状況にありました。」と評しています。
立地上のポテンシャルは高いにもかかわらず、活用されていなかったのです。
【ファーストスクエアガーデンのリニューアル】
このような状況を受けて、2017年にファーストスクエアガーデンのリニューアルが行われました。リニューアルに当たっては、利用者となるはずの近隣のオフィスワーカーとワークショップを重ねて潜在需要を探り、デザインに落とし込むとともに、「運営と一体となってサービスを提供するソフトの仕組みも合わせて構築」(GKデザイン総研広島のサイトより)しました。
このような取り組みが評価され、ファーストスクエアガーデンのリニューアル事業は2018年グッドデザイン賞など複数の賞を受賞しています。
【リニューアル後のファーストスクエアガーデン】
ここからはリニューアルされたファーストスクエアガーデンを紹介します。
次の写真がリニューアル後のものですが、地形と一体化したベンチができていること、植物が増えていることなどが分かるでしょう。地面の高さが場所によって違うのと、飛石や段差のところで下を向くので、地面近くにある植物が自然と目に入ります。また、植栽以外の部分ではウッドデッキの割合が高いように見えます。
訪問日は10月だったので、ハロウィンの飾りつけがされていました。緑の植栽にオレンジのランタンが良い感じです。
訪問したのは平日の午後4時ごろでしたが、数名の人がベンチに腰かけて、読書したりラップトップを操作したりしていました。
【まとめ】
リニューアル前のファーストスクエアガーデンは好立地にありながら人が寄り付かず閑散としていました。このことから言えるのは、立地のポテンシャルが高くても美観、雰囲気、設備、ソフト面で欠けているものがあれば活用されないということです。
庭園を造ることはそこを人が寄り付きたい場所に変え、場所の価値を高める1つの方法でもあります
【受賞歴】
2018グッドデザイン賞
2018SEGES「都市のオアシス」認定
【基本情報】
所在施設:大手町ファーストスクエア
立地:東京都心の商業地
庭の性格: 公開空地、公共庭園
作庭年代: 現代
設計:NTT都市開発株式会社、GKデザイン総研広島、株式会社パーク・コーポレーション
アクセス:
・東京メトロ大手町駅からビルに直結。地下1階から出るとファーストスクエアガーデン
・大手町駅 C8・C11・C12 出口から直結
公開状況:公開。自由入場。
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