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岡山後楽園ののびやかさ

更新日:2023年12月27日

岡山後楽園は伸びやかで気持ちの上向く庭園です。

私のお世話になっている先生が四国の高松にいますが、ある時お会いしたら、家庭の事情等で心労があり、気晴らしが必要そうでした。なので「どこか行く予定はないんですか」と訊いてみると「ちょっと落ち着いたら岡山後楽園へ行こうと思う」とのこと。今回はそんな気の晴れる庭、岡山後楽園を紹介します。


【概要】

岡山後楽園は江戸時代初期に造られた大名庭園。施主は岡山藩主池田綱政、造営の監督は閑谷学校の建設なども行った岡山藩士津田永忠。

​【後楽園のきもちよさ1 見通しの良い明朗な風景】

岡山城の北にあり、庭からは岡山城天守(復元)がよく見えます。いわゆる日本庭園のイメージとはかなり異なりますが、見通しが良く明るく爽やかな庭です。

後楽園と岡山状天守
後楽園と岡山状天守

一応池泉回遊式庭園となってはいますが、最初の設計では延養亭(メインの建物)から風景を眺める庭でした。延養亭から東を見れば、建物のすぐ前に低木や景物、その向こうに芝と池、さらに向こうには借景の山が見え、広がりと奥行きのある眺めになります。延養亭は普段は公開されていませんが毎年特別公開があります。

延養亭から見る風景
延養亭から見る風景

唯一の築山である唯心山に登ると、ここからは園内の路がよく見えます。明るい緑の芝生を横切る路の白さがさわやかです。

芝生を横切る白い路
芝生を横切る白い路

​園内には水田があり、水田の向こうには茶畑の刈込も見えます。

後楽園の水田と茶畑
後楽園の水田と茶畑

後楽園のきもちよさ2 水の景】

​長さ約640mもの曲水(曲がった小川)があるのも後楽園の特徴です。江戸時代までの日本庭園は水と言えば池が主流で、長い曲水があるのは個性的。曲水は北西部の林から始まり、延養亭の前や芝生の中、築山のふもとなどを通って南東部の池に注ぎます。幅が広く、水量も多く、常にさらさらと流れているのが心地よいです

庭の小川にしては水量が多い
庭の小川にしては水量が多い

芝の間を流れる小川
芝の間を流れる小川

流れと飛石
流れと飛石

【私的メモ書き】

個人的には、庭について書き始めるきっかけになった庭です。この後楽園という庭、​概ね高評価が定着している一方、とひどくがっかりする人もいます。そういう人の「つまらん」「渋みや深みが無い」「京都のお寺と比べて云々」という口コミを読んで反論したくなったのが、その後庭について調べ、庭について文章を書いているきっかけです。

後楽園の低評価の一部は、その根底に、「庭とはこうであるはず」という期待とのずれがあるように思います。実態としては庭は渋いばかりではないのですが、行く前にそれがわかっていなくてあらゆる庭に渋さを求めると、期待は満たされるはずがありません。すると期待通りでなかったという不満から、切って捨てるような低評価になりがちです。

だからこのサイトでは、「庭は多様である」ことを広めようというつもりで文章を書いています。


【基本情報】

・施設の性格:大名の別邸

・庭の性格:饗応、スポーツ、鍛錬、植物の栽培など多目的に使われる庭

・所在地:〒703-8257 岡山市北区後楽園1-5

・アクセス:

JR岡山駅から市内電車東山行きで4分→「城下」下車徒歩10分

JR岡山駅から徒歩25分

・公開状況:公開(有料)

【外部サイト】

【施設など】

売店・休憩所、トイレ、駐車場あり。

​またほとんどの建物は事前に申請の上有料で借りることができる。

​【おすすめの本】

『日本庭園を読み解く~空間構成とコンセプト~』(戸田芳樹、野村勘治共著)

約100ページの本のうち10ページほどを津田永忠と後楽園の解説に充てている。

​10ページだけとはいえ、地方庭園について専門家の解説が本で読めるのは貴重。

【後楽園に関する絵図】


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