都会の庭:大手町の森
更新日:2023年12月12日
東京にはたくさんの庭園があります。
そして東京のような大都会の庭園は様々な役割を担っています。例えば住人のストレス軽減、空気の浄化、水の循環、ヒートアイランド現象の緩和、生物多様性の維持などです。
今回はそのような大都会の庭の中から大手町の森を紹介します。
【大手町の森】
大手町の森は東京の中心部、大手町の高層ビル「大手町タワー」の敷地にある緑地です。その面積は3,600㎡と、敷地全体のほぼ3分の1にあたります。ビルの敷地ではありますが柵などを設けず、一般の人が自由に出入りできるようにした場所です。このような場所を公開空地と言います (公開空地の話はあとでまた出てきます)。
そのコンセプトは「都市を再生しながら自然を再生する」こと。この場所に本来あったはずの森を再生するため、フィールドワークを行って植生を調査しました。
外見上の特色として次のような点が一般の緑地とは異なっています。
・木が整えられていない
・種類や樹齢の違う木 (したがって大きさや勢いの違う木) が混在している
・木の生え方に密なところとまばらなところがある
・地面に不規則な起伏がある
これらの特徴もフィールドワークの結果を踏まえたものです。
このようなコンセプトで造られた大手町の森は後述のようにいくつもの表彰を受けました。また、2021年時点で希少種を含む208種の植物が育ち、希少種のトンボを含む129種の昆虫、タカなど13種類の鳥類が観測されています。
大手町の森にはベンチなどが設置され、休憩スペースとして利用されています。本を読んだりしてしばらくこの場所にとどまる人が多いようです。
日陰に強い下草が茂っています。
大手町の森は大手町タワー地下1階とエスカレーターで接続しています。エスカレーター横の斜面も森になっています。
【総合設計制度と公開空地】
大手町の森はビルの敷地のほぼ3分の1という広さがありますが、これは総合設計制度という制度に関係があります。
総合設計制度により、敷地のある割合を公開空地にした上でいくつかの条件をクリアすると容積率などの制限が緩和されることになっています。
行政がこのように公開空地を奨励するのは、都市計画上、通風、延焼防止など様々な目的で空地を確保したいからです。そのために制限緩和を報酬として、公開空地の設置を促しています。
【結び】
東京は庭園の本場です
庭園と言えば芸術性という観点から語られることが多いですし、京都の有名寺院の庭園などは繰り返し紹介されます。ですがそればかり庭園ではないということが、このサイトの基本姿勢です。東京の庭園には切実な需要があり、複合的な役割を担っています。
そしてまた、庭園デザインというのは芸術家のインスピレーションで決まるばかりでなく、科学的知見と組織的活動に基づいても決まるのだということを付け加えたいと思います。
【受賞歴】
「DBJ Green Building 認証」の最高ランク5つ星認証(2022年11月)
「いきもの共生事務所*認証制度 (都市・SC版)」の第1号認証取得(2014年2月)
第30回 都市公園コンクールで最高位「国土交通大臣賞(企画・独創部門)」受賞(2014年10月
Arcasia Awards For Architecture 2018(AAA2018)
「SEGES(社会・環境貢献緑地評価システム):都市のオアシス2021」認定(2021年9月)
第35回「緑の都市賞”国土交通大臣賞”」受賞(2015年10月)
BCS賞
【基本情報】
所在施設:大手町タワー
周辺環境:東京中心部のオフィス街
庭の性格:公開空地、緑地
作庭年代:現代
設計:大成建設
アクセス: 地下鉄各路線から大手町タワーに直結。大手町タワーを出てすぐに大手町の森です。
公開状況:公開 (自由通行)
【Learn More】
大手町の森 - 大手町タワー (公式)
Comments