都会の庭:京王プラザホテルの外空間
更新日:2024年12月29日
【はじめに】
京王プラザホテルの外空間とは、1971年の京王プラザホテル新宿開業時に造園家の深谷光軌氏がつくった庭園です。特に、建物と4号街路の間にある幅100、奥行き15mの空間のこと。「外空間」は深谷氏が好んだ言い方で、ホテル側は「雑木林庭園」と呼んでいます。
【京王プラザホテルの外空間:構成と印象】
まずは構成を建物と4号街路の間にある空間について構成を見ていきます。
この奥行き15mの空間は、高低差をつなぐ斜面と、建物に平行な通路あるいはテラス、そしてコナラ、ケヤキ、モミジなどの植栽でできています。
道路側から、歩道、斜面、テラス、ゆるい斜面、ホテル建物の順です。
次の写真でわかるように、テラスは道路より高くなっていて、この高低差を斜面がつないでいます。写真左がテラス、右が歩道です。両者は数か所の階段でつながっています。

テラス部分を歩くこともできます。写真左が公道側、写真右が建物側です。このように見ると、ホテルが森の小径沿いにあるかのように感じられます。

外空間の植栽はケヤキ並木の歩道と一体化し、緑の空間を造っています。歩道と接する部分が垂直ではなく斜面となっていることで、空間が一体に感じられます。ストリートビューで見ると、ホテルの外空間が都市の街頭風景でもあることが分かるでしょう。斜面とその左がホテルの外空間です。
公道側から建物を見ると、雑木林の向こうにレストランが見えます。

逆にレストラン側から見ると、大きな窓の外に雑木林の緑が広がります。
【京王プラザホテルの外空間:ポイント】
この空間にはいくつか筆者の気に入った点があります。
まず、森の遊歩道沿いにホテルがあるような雰囲気です。石のテクスチャーにも心ひかれます。そして、ケヤキ並木の歩道と一緒になって街の景観を造っているところもポイントです。


【まとめ】
京王プラザホテルの外空間は、ホテルの雰囲気を作る環境であると同時に街の景観でもある空間です。観光客が行くような庭ではありませんが、近くに行くなら寄ってみるとよいでしょう。仕事で造園やランドスケープに関わる人にはおすすめです。
【基本情報】
所在施設: 京王プラザホテル
庭の性格: ホテルの雰囲気づくり、都市景観の一部、 ホテルレストランからみる風景
設計:深谷光軌
作庭年代: 現代(1971年)
アクセス:新宿駅西口から徒歩5分
【受賞歴】
新宿区が選定する「みどりの新宿30選」に「京王プラザホテルの雑木林」として選定
【Learn More】
岡田憲久 『日本の庭ことはじめ』 2008
戸田芳樹『昭和の名庭園を歩く~作庭のおもいとかたちを紐解く~』2019
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