縁側×庭園 旧鈴木邸の実家感
更新日:2月13日
「この波は 須磨へつづくか 三津の月」正岡子規
【概要】
旧鈴木邸は愛媛県松山市三津にある古民家です。2021年3月に国の有形文化財に登録。2023年現在は民泊やレンタルスペース、曜日限定でおはぎカフェとして営業しています。
庭に面した縁側の席があります。
【三津の町について】
松山市の北西にある三津 (三津浜) の町は松山の外港。小説『坊ちゃん』の冒頭で主人公が降り立つのも三津の港です。明治時代までは松山と本州方面をつなぐ玄関口で、子規や漱石、秋山兄弟もこの港を利用しました 。
なかでも松山市出身の俳人正岡子規は子供のころから何度も三津を訪れたことがあり、東京で働くようになってからも帰郷のたびに三津の料理屋を利用し、特に鯛料理を好んだといいます。
現在の三津は昭和レトロな商店街に明治大正の建物が混じるこぢんまりとした町です。古い建物の中には現在も住居や商店として利用されているものがあります。
【旧鈴木邸について】
三津の町で現在も使われている古民家の1つが旧鈴木邸です。間口が12mほど、奥行きが20mほどで普通の民家のサイズ感。明治後期に建てられた米屋さんのお宅を現オーナーが修復しました。修復にあたっては伝統的な工法を用い、古い民家の素材感を重視したそうです。
個人的ポイントは今でも民家の生活感があること。2階の書斎には前の住人の蔵書が (ちょっと黄ばんで) 残っていますし、6畳の茶の間に夏には扇風機、冬にはコタツが登場します。この茶の間から広縁越しに見えるのが今回紹介するお庭です。
【庭について】
庭は主屋の裏にあり、離れの茶室や裏口への通路を兼ねています。通路スペースを十分に開けて橋の方に植栽や景物を置いている点、隣家との境にやや背の高い木を配して遮蔽している点は生活の庭という感じがします。アサガオの支柱も懐かしく感じます。
沓脱石に置かれていたのはごく普通のサンダルです。生活感、日常感があります。
庭に面した縁側でおはぎと煎茶で一服。火鉢、うちわ、切子のグラス、ちゃぶ台などにレトロ感と静観積感が感じられます。
実家でダラダラしている感じの心地よさがありますね。
庭そのものではなく庭のある生活、ということを感じた庭でした。
【むすび】
庭マニアは庭だけを切り取って語る傾向がありますが、旧鈴木邸の庭はあくまで生活の背景です。庭の見える縁側でお茶を飲みながらリラックスする、そのような時間を好ましく思う方は旧鈴木邸を訪問してはいかがでしょうか。
【基本情報】
施設の性格: 町家
庭の性格: 通路、通風採光、住宅の雰囲気作りなど
作庭年代: 現代?
アクセス:
・鉄道利用の場合
伊予鉄高浜線「大手町駅」乗車11分「三津駅」で下車して徒歩10分。
または「港山駅」で下車、三津の渡し(無料)を利用し渡し舟を降りて徒歩3分
・自家用車利用の場合
松山市中心部から車で約20分
専用駐車場は1台分しかありませんが、徒歩数分以内にコインパーキングがあります。
公開状況:利用者向け
【旧鈴木邸CHAYA のメニュー】
旧鈴木邸では曜日限定でおはぎカフェを営業しています。
スイーツの種類はおはぎ (きな粉、あん、ごま)、おはぎパフェ 、ぜんざい、あんみつ
飲み物は煎茶、ほうじ茶、コーヒーです。
【外部サイト】
旧鈴木邸 (公式)
(近隣の駐車場情報)
2023年10月訪問。情報は訪問時のものです。
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