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瀬戸内海歴史民俗資料館 土地と建築と中庭のつながり

更新日:2月11日

【瀬戸内海歴史民俗資料館とは】

瀬戸内海歴史民俗資料館は、香川県中部、五色台という山塊の上にある人文系博物館。瀬戸内海沿岸11府県の暮らしと文化に関する道具を収集、保存、研究、展示しています。

収蔵品は農村や漁村の生活道具が多く、キャッチーさはありませんが、実物展示が多い博物館です。収蔵品の一部は国の重要有形民俗文化財に指定されています。


また建物は1975年に日本建築学会賞を受賞し、2024年には重要文化財に指定されています。

答申


【歴史民俗資料館の建築について】

この建築は庭園とも関係が深いのでもう少し説明します。

ポイントは、場所を意識した建築である事。例えば外壁は建築工事の際に出た石を積み上げるように貼りつけていますし、庭を囲む10個の展示室が山の地形に沿って高さを変えながらつながっています。

重要文化財の指定に際しても

「モダニズム建築の手法を踏襲しながらも、近現代における国際様式への批判を背景として、立地や風土を考慮し、豊かな自然の残る地方の場所性を活かした秀逸な作品」

と、場所とのつながりが評価されています。


【瀬戸内海歴史民俗資料館の中庭】

では改めて庭園を見てみます。

場所を意識した建築に合わせ、庭園も建築のコンセプトを補強するものになっています。順路に沿って説明しましょう。

資料館前の階段を上って建物に近づくと、正面はガラス張りの中央ホール。ホールのガラス越しに木の生えた盛り上がりが見えますが、あの場所が実は中庭です。写真右に見える建物の外壁は、工事の際に出た石を積んだもの。

エントランス前から見える中庭
エントランス前から見える中庭 (写真AC)

建物に入りホールに進むと、大きな窓から中庭がよく見えます。

正面に見える「山」は、資料館のために山を削る際に岩を残したもので、建物外壁とあわせて、土地とのつながりを示すシンボルと思われます。岩盤上の松やわずかな下草も、もともとの植生を残したものです。

ホールから見た中庭
1. ホールから見た中庭

(ちなみに資料館のすぐ東には、露出した岩盤にひょろひょろと松の生えた場所があり、中庭の様子とよく似ています)。


別角度から見た中庭。写真左が中央ホールです。

 瀬戸内海歴史民俗資料館中庭
2. 瀬戸内海歴史民俗資料館中庭

中庭の裏にある展示室を通り、博物館を一周すると、いったん建物を出て、庭の左(写真2の右奥の位置)に出てきます。写真3正面が中央ホール、左にある木の生た場所が中庭の「山」です。建物の外壁や路面の敷石は工事の際に出た安山岩を利用したもの。この辺りの路が細い谷路になっている点も気になります。

谷地形の路
3. 谷地形の路

中庭と松
4. 中庭と松

石段を下りて中庭の平地部分へ。

瀬戸内海歴史民俗資料館中庭
5. 瀬戸内海歴史民俗資料館中庭(写真AC)

写真右が中央ホールなので、これで博物館を一周して元の所へ戻ってきたことになります。


外へ出て、もう一度エントランス前から建物を見ます。

ガラス張りのホールの向こうに、中庭の岩と松が見えています。写真上部に少し見える灰色の壁は中庭の向こうにある建物です。

岩盤を残した中庭を石壁の建物が囲むという配置が分かります。

エントランス前から見える中庭
エントランス前から見える中庭 (写真AC)


【まとめ・感想】

瀬戸内海歴史民俗資料館は、場所を意識した建築が高く評価されている博物館です。中庭もまた、そのコンセプトの一部として、場所とのつながりを補強しているように思われます。

まず中庭の小山と松は、元々あった岩盤と植生を残したもの。園路に敷かれた安山岩もこの場所にあったものですし、一部細くなった路も山を感じさせます。つまり建物の周辺にある山が中庭までつながっていて、そこに建物が溶け込んでいるつもりになるわけです。


庭園と言えばもっぱら都風が理想という風潮が続いてきましたが、土地とのつながりはもっと話題に上っても良いと思います。特に、建築の世界では土地との結びつきも評価されるのを見ると、なおさらそう思います。


【基本情報】

施設の性格:博物館

庭の性格: 中庭。建築のコンセプトの一部。

作庭年代: 現代

アクセス: JR高松駅から車で約25分

JR坂出駅から車で約30分(約20km)

瀬戸中央自動車道・坂出北ICから車で約30分(約20km)

無料駐車場あり(普通車30台)

半島北側からのルートがおすすめです。南からのルートはかなり遠回りになります。

公開状況:公開(無料)


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