流店 岡山後楽園の奇妙な建築
更新日:3月1日
【はじめに】
流店(りゅうてん)とは岡山後楽園にある建物の1つで、建築家にも注目されているものです。
今回は岡山後楽園の奇妙な建築「流店」を解説します。
【流店の基本情報】
流店は岡山後楽園の中央よりやや東、人口の小山の東にある木造、こけら葺きの建物。東西約10m、南北約5mの長方形の建物で、あずまやの上に物見台を乗せたような形をしています。
造られた年代ははっきりしませんが、庭の最も古い図にはなく、『御後園絵図』 (1771年) には描かれています。
【流店のユニークな特徴】
ますは流店のユニークな特徴を5つ紹介します。
建物内を水が流れている
最もよく目立つ特徴は建物内を水が流れていることです。建物内に流れを引き込んだ例はほかに金沢の成巽閣(せいそんかく)などがあります。成巽閣では軒下の角に流れを引き込んでいるのに対し、流店ではより大胆に、建物を二分するように水が流れているのが特徴です。流れの両側はそれぞれ約190cmと100cmの板敷きとなっています。
建物を2分する水の流れ 1階は壁がなく、細い柱だけ
流店の1階には壁が無く、部屋の部分は14本の細い角柱 (11cm×11cm)と雨戸 だけでできています。その外には庇の張り出しを支える直径約13cmの丸柱が並んでいます。
流店の外観 柱の配置が不均等
柱の間隔は一定ではなく、1250mm、2035mm、2505mmと様々になっています。
2階にはあるが階段は無く、2階に登るには取り外し式のはしごを使う
2階雨戸の戸袋がはみ出している
【建築家が注目する後楽園流店の特徴】
冒頭で書いたように、流店は建築関係者の間で知られている建物です。記事の最後に挙げた書籍やブログから、建築関係者が注目するポイントをまとめました。
水を取り入れた独特の構造
流店の最大の特徴は、建物の中央を水路が流れていることです。。時期によっては畳が敷かれていたらしく、通常は離れた場所にある「座敷」と「水辺」が一体化してる点が興味深いところです。
庭園と一体の空間
壁がなく、柱も細い開放的な空間となっています。水の流れが建物の内外をつなぐことで、さらに庭園との一体感が増しています。
軽快な意匠
流店の建築は、柱や屋根の構造が比較的シンプルで、軽やかな意匠が特徴です。柱が細く、壁の少ない点が軽快な印象となっています。
【まとめ】
流店は水を取り入れた斬新な設計と、庭園との一体感のため岡山後楽園の中で特に建築的に注目される建物です。建築好きの人を誘って行けば、一緒に庭園を楽しめるかもしれません。
【Learn More】
・書籍
中川 武 (編集)『日本建築みどころ事典』東京堂出版 (1990)
竹原義二『竹原義二の視点 日本建築に学ぶ設計手法』学芸出版社 (2023)
・論文(ウェブで閲覧できるもの)
・建築家のブログ等
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