修学院離宮のスケールと大刈込
更新日:2023年12月30日
【前説】
修学院離宮 (しゅうがくいんりきゅう) は京都市の北東、比叡山の麓にあり、眺望や大刈込が有名 (後述)です。
【修学院離宮の概要】
修学院離宮は17世紀中頃、後水尾上皇が造営した離宮です。
上御茶屋 (かみのおちゃや)、下御茶屋 (しものおちゃや)、中御茶屋 (なかのおちゃや)と呼ばれる3つの茶屋と、茶屋を結ぶ通路からでききています。
このうち本体は眺望に優れた上御茶屋になります。かつて上皇は京都仙洞御所を出発し、下御茶屋 を中継地点とし、上御茶屋で眺望と舟遊びを楽しみました。
中御茶屋は創建当時には無かったものですが、後水尾上皇の娘のために建てられた住まいと庭が、後になって修学院離宮に組み込まれました。
【修学院離宮の配置とスケール】
修学院離宮と言えばそのスケール感が特徴の1つです。
山裾から山腹にかけて3つの茶屋と通路があり、参観コースだけでも3㎞程の道のりになります。
通路の周辺は田畑になっています。水田のイメージがありますが、場所によっては芋畑や野菜畑です。田畑の間の路を「宮内庁」と書かれた軽トラックが走っています。
園内の最高点「隣雲亭」の手前には急傾斜があります。通路は植え込みの中を通っていて、周囲はまったく見えません。
そして頂上に着くと視界が開け、このような景色が目に入ります。
見下ろせば浴龍池 (よくりゅうち)、その向こうには池の土手、さらに目を上げれば幾重にも連なる山並みと遮るものの無い空。
ちなみに修学院離宮の表門からここまで、直線距離で約360mになります。参観コースに沿ってですと、途中で中御茶屋に寄ってから戻る分も含めて 1.5km ほど。スケールの大きな庭園なのです。
【もう1つの見どころ大刈込と「造園は土木だよ」という話】
さて上にも出てきた浴龍池ですが、普通は山の中にこのような形で池はありません。眺望の良い山の中で、舟遊びや池の景色も楽しもうという贅沢のために土手を築いて水をためたのです。上の写真でも池の向こうに土手が写っています。
その土手を下流側から見た景色がこちら。土手には低い木がたくさん植えられ1つの塊のように刈り込まれています。
この刈込も有名なのですが、なぜここに刈込があるのでしょうか。
この刈込の下には土手を補強する石垣があります。そしてこの石垣が周囲と調和しないとだれかが思ったようです。つまり
1)庭の池のために土手を造る→2)土手を補強する石垣が悪目立ちする→3)大刈込で覆う
という流れがあります。ここで1)→2)は庭を造るために工事をするという関係、2)→3)は工事による景観破壊に対して庭園の技術で対応するという関係です。
鑑賞主体の解説書では造園と土木の関係には触れないことも多いのですが、現実的には無関係の筈が無い、という話でした。
【結び】
修学院離宮は比叡山の裾から山腹にかけて造られた広大な山荘です。メインである上御茶屋は、眺望のよい山腹でありながら舟遊びが楽しめる贅沢な場所でした。
池のために土手を築き、土手が目立つからと大刈込で覆ったこの山荘は、庭園と土木の関係を考えるきっかけになる場所でもあります。
【参観時の注意】
・参観路は山麓から山腹にかけて、上り下りのある3㎞ほどの道のりです。体調、体力が十分な状態で参加しましょう。足下は歩きやすい靴で。
・参観ルートの途中にはトイレがありません。出発前に待合所で済ませておきましょう。
・暑い時期には熱中症対策が必須です。待合所には自動販売機があります。また、熱中症対策のため飲み物を携帯し道中で飲むことが認められています。
【基本情報】
施設の性格: 離宮 (皇室の別荘)
庭の性格: 社交、遊興などのための庭園
作庭年代: 江戸時代
設計:不明
アクセス:
駐車場は無く、公共交通機関の利用が基本となります。
叡山電鉄 修学院駅から 徒歩20分 または
市バス 修学院離宮道から 徒歩15分
公開状況:公開 (無料)
2023年7月訪問。情報は訪問時のものです
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