旧野崎家住宅庭園
更新日:1月7日
【前説】
岡山県の児島にJRで行った人は、児島駅周辺の土地が広く使われていることに気づくでしょう。広いバス・タクシー乗降場、駅前の公園、広い駐車場のある大規模小売店。このように土地を広く使うことが可能だったのは、ここが塩田跡地だったからです。児島にはもともと平地はわずかしかなく、児島駅を含む一帯の土地は、塩田王こと野崎武左衛門 (のざき ぶざえもん、1789 - 1864)が塩田として干拓したものでした。今回はこの野崎家の住宅と庭園を見てみましょう。
【野崎家住宅について】
旧野崎家(のざきけ)住宅は岡山県倉敷市、児島地区にある江戸末期~明治の和風邸宅で、敷地面積約1万平方メートルの豪邸です。主屋、蔵、長屋門など建築物がほぼそのまま残っていて、12棟が国の重要文化財に指定されているほか、敷地は県の史跡に指定されています。
屋敷があるのは児島駅から徒歩15分ほどの場所、児島ジーンズストリートの北端です。敷地は東を正面とし、裏側は山の崖になっています。屋敷の持ち主が暮らす主屋のほかに、蔵が5つと納屋が1つ、茶室が3つ。
賓客の応接用に「表書院」と呼ばれる建物があり、家の人が使う長屋門とは別に賓客専用の門もあるのが江戸時代らしいところです。
建物内部に上がることはできませんが、庭から室内を見ることはできます。
【庭園について】
庭園として景色を造った部分は主に表書院の周辺にあります。パンフレットによれば枯山水で、「表書院からの眺めに中心を置いたもの」。大ぶりな飛石があり、特に踏分石は直径2mくらいありそうです。この大きな踏分石は藩主 (池田家) が駕籠で訪れた際にここで駕籠を降りる「お駕籠石」だったという説明もありました。この庭が賓客をもてなすための庭だったことがわかります。
庭には茶室が3席もあり、すべて庭の南部にあります。
上でも書いた通り建物と庭がすっかり残っているので、門、庭、応接スペース、住居などの関係がよくわかります。
下の図は旧野崎家住宅の平面図です。庭園と茶室が表書院回りにあるのが分かります。また表書院には母屋を通らず庭の門を通っていけるようになっています。
【観光客向け情報】
長屋門のところで料金を払い、建物の周りを時計回りに一周するのが順路です。建物に上がることはできません。座る場所や飲食場所はないので注意。トイレは有料エリアと無料エリアに1カ所ずつありますが、昔の公衆トイレのような簡単なものです。
【補足情報と余談】
・野崎家住宅から100mほどのところにある「たい暇堂」(たいは2点しんにょうに台)は野崎家の別邸で、国の登録有形文化財に指定されている。
・野崎家住宅から車で10分ほどのところにあるうどんや「梅荘」も野崎家の別荘。こちらも登録有形文化財に指定されている。
・武左衛門の子孫も塩の製造・販売を行っている。味の素から販売されている「瀬戸のほんじお」「アジシオ」を製造しているのは、武左衛門の子孫の会社「ナイカイ塩業」。
・野崎家住宅から南西に400mほどのところにある緑地とオベリスクは、武左衛門を讃える庭園と記念碑。
【基本情報】
・施設の性格:大規模住宅
・庭の性格:迎賓空間(表書院前)、茶庭、通路、作業場など
作庭年代:江戸時代末期?
・所在地:
岡山県倉敷市児島味野1丁目11−19
・アクセス:
JR児島駅から徒歩20分くらい
・公開状況:公開(有料)
【外部サイト】
野崎家塩業歴史館 (公式)
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