借景は見せたいものだけを見せる
更新日:1月29日
日本庭園の良く知られた技法に借景があります。外の景色を庭の景色として取り入れる技法です。
その事例に当たると、外の景色をそのまま見せるのではなく見せ方をコントロールしていることが分かります。
今回はそのような事例を紹介しましょう。
【借景の事例】
円通寺庭園の場合。
借景の比叡山は約6kmの距離にありますが、円通寺客殿から見ると距離感がわかりません。遠くにあるはずの山が近くにある絵のようにも見えます。
これは生垣で中間地帯が隠されているためだと説明されています。
無鄰菴庭園の場合。
一見、庭園と東山がつながっているように見えます。しかし本当は、園内の木立と借景の東山との間に、仁王門通り・南禅寺・琵琶湖疎水などがあるはず。
間にあるものを隠すことで、実際にはつながっていない庭園と東山がつながっているように見えるのです。
栗林公園の場合。
平地部の林と背後の山は違和感なくつながっているように見えますが、実際は山の手前に園内の池2つと茶室、芝生エリアなどが隠れています。
林が途切れている部分が隠れているために、つながっているように錯覚するのです。
足立美術館の場合、
人工滝のある崖の手前に、資材置き場、用水路、道路(片側一車線)などが隠れています。この道路、安来駅などから美術館へ来る際に普通に通る路なので、資材置き場も見ている人が多いはずなのですが、この場で思い出す人は少ないでしょう。
北川村モネの庭マルモッタンより、「ボルディゲラの庭」。
地図で見るとこの方向には北川村モネの庭の駐車場もあり、麓のむらもあります。
本楽寺庭園。
川の手前に、鉄道や道路が隠れています。
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